183系気動車(キロ182-9) 最終確認時期:2016年7月

北海道へ行った時、たまーにすれ違う、苗穂の奥でウロウロしているのを見掛ける、でもなかなか乗れない…と言う感が強い1両にあるのがキロ182-9(キロ9)でしょうか。基本的に予備車両、今は「オホーツク」のキロハ182が検査や不具合になるとひょっこりお出ましになるのですが、その際は蹴り出される普通席を補うため、原則で増3号車を従えた5両編成。運用は神出鬼没に近く、狙って乗るには「札幌に住むしか…」と仲間内に言われたようなこともあるくらい。

事実、コレに乗りたいと思って足掛け3年、私のショボい休暇と寂しい財布の中身がどれだけ痛めつけられて来たかと思うと、一人勝手に「年休殺し」と渾名したくもなる存在です。

前もって運用に入るよう組まれた時は、2〜3日前から駅設置のMVで増3号車ともども確認できるようですが、急遽の車両交換(車交)になると文字通りお手上げです。

この車両が運用に入る時は、いつもの4連と停車位置が違う、自由席位置が違う…なまじ旭川までの利用者も多いので、急な差し替えともなれば札幌駅ホーム案内もドリフ盆回りの如くスチャラカな展開となります。いつも使う人にとっては、地味に迷惑でしょうね。

それでも、私が学生時代に北海道へ行った時は、夜行列車を中心として「増21号車・増22号車…」なんてブッ飛び増結番号があった位繁盛していたのを思うと、グリーン車込みでいつもが4連に収まるというのは、寂しい限りです。

さて車内ですが、座席は北海道スタンダードの1&2による3アブレスト、8列構成となります。

座席以外はキロハのそれと基本的に変わりませんが、客席数が異なっており、キロハは7列、キロ9は8列になっています。

違う点を挙げろと言われれば2カ所、荷棚先端の飾りフレームと床面のカーペットの色分け(仕切扉部分での折返し処理)が異なっています。特に前者はこの車両だけという、どーでもいい感漂う差違でしょう。

座席は1160mmの定番ピッチで回転油圧リクライニングシートとなっています。座席付番もメーカープレートも無いけど、この頃の北海道だとほぼ小糸工業製だろうな、と。

座り心地ですが、座面はバウンス系でもなければ、ウレタン詰物系でもない過渡期の座り心地です。強いて言えばバケット化されたバウンス系なのですが、なにぶんヘタリが凄くて、所々ブリッジタイプのようなフレームの粗が目立つため、今となってはあまり褒められない座席です。

座面は横幅こそ540mmとかなりのボリュームですが、翻ってアームレスト間の高低差が200mm(アームレストカバーまで入れると220mm)と、アームレストが高めになっており、自ずから脇が開き、肘や肩が上がってしまうことから、長時間の着座では疲れてしまうでしょう。

背ズリは、見かけよりランバー部分の張り出しが心許ないもので、後のキロハ改座席で、ランバー部分が調節できるようになっているのは、コレの反省という名のフィードバックなんだろうな、と穏やかに観測します。

また、この頃の座席あるある、という程度の主流ではありましたが、背ズリが低く、ヘッドレストピローが幅を利かす最近の座席に慣れると、頼りなさも残ります。

フットレストは3段キックダウンの古典的なもの。テーブルはインアームタイプのみで、背面にはありません。

座席の素性とすれば、昭和63年頃の改造により設置され、型番付与の無いオリジナルとなっています。パーツ単位で見ればR35のソデ体にR33/34のセンターアームレストを継ぐ、レアな組み合わせの過渡期的座席と言えますし、今となっては同系譜の座席において、一般客が見当たることができるセンターアームレスト形状として唯一となりました。

キロ182-7,8のそれはソデ体もR33/34タイプの上、レッグレスト付きだった点から、ハイグレードグリーン席の位置付けとしては2代目あるいは2期となるものです。

北海道のグリーン席はJR化後、2つの道を歩みました。1つはハイデッキ化、1つがハイグレード化。ハイデッキ車は4列席の代わりに眺望を、ハイグレード車は3列席のゆとりを、それぞれトレードオフ的価値で棲み分けていましたが、後にハイデッキ車が3列化され、座席配置上のフォーマットが統一され、振子車両の新世代配置へ繋げられていきました。

よって、強いて言えば背ズリ背面のTVの有無が唯一の違いになっていました。TVは勿論、Webも思いのままなスマホ・タブレット全盛の今にしてその役目は既に終え、跡地が背面に残るだけとなっています。今、座席単位でTVが残ってるのと言えばニセコエクスプレスくらい?

ちょっと失礼してカパッと開けてみると、TVユニットを固定していた金具と、配線を引き通していた孔の痕が見当たります。

TVは液晶タイプ・画面サイズ3.5インチと、今にしてみれば視聴にもなかなかしんどいサイズで、何てことない程度のものでしたが、JRの鉄道座席にて文字通り全国最速デビュー(この後、JR九州が783系グリーン席でも登場させた)、最新鋭の付帯設備と評価されるべきものでありました。

文字通り、JR北海道が本気で攻めに出ようとしていた頃のものであり、今となっては文字通り夢の跡です。

乗降ドアは車両の概ね真ん中のブロックに位置しています。試作車では、車端にあったそうで…。

デッキの名もそのままのような、ステップを上がって乗車するスタイルです。

JR北海道は、先日のプレスリリースの通り、車齢が高い車両を中心に老朽車両を順次整理(廃車)する方針であり、この車両も登場から30年以上経過していることから、ご多分に漏れない位置付けであり、引退はそう遠くないと言われています。

普通、そういう車両であればメンテはお手抜き化し、使い潰して終わりとしてしまうところ、このドア窓枠のゴムは今年になって交換しています。まだ使うの?という向きもありますが、北海道の特急車両は1日の運用数・距離が半端ないので、なんだかんだで日々のメンテナンスが欠かせない、ということなんですね。

デッキに入って客室と反対側、元・喫煙スペースがあります。平成7〜8年頃に改造設置されたものになりますね。今は全面禁煙につき、体の良い大形荷物置場にされていたりします。

つまらん話かも知れませんが、通路側にエアカーテン宜しく通風口があり、比較的明瞭な空調風が出ていることから、冷房がイマイチで暑い時は避暑にお勧め(違)。

元・喫煙スペース前の通路から客室側を見ると、古風な自動ドアが1枚。

この向こうには車掌室があり、客室へはさらにもう1枚自動ドアを通ります。国鉄車両における優等車両アイデンティティがしっかりと息づいています。

さて、この車両の3割近い部分を占めるのが、供食設備としてのミニキッチンです。

食堂車が無くなったものの、長距離運用が残る道内特急にして、軽食や喫茶提供の需要は無視できず、グリーン車に併設される形で設置されていました。尤も、今の「オホーツク」は車内販売も終了しており、こちらも夢の跡と言えるかも知れません。

ホーム側の大きな扉は資材積込用のそれ、ガッチリとしたフレームが萌えドコロです。

ちょっくら失礼してカーテン開けてみると、厨房機器はほどほどに残されており、厨房っぽさが見て取れます。

手前側には車販ポットへの注ぎ入れができる業務用コーヒーメーカーとアイスクリーム用ストッカーが残っています。

反対側に、通用扉がありますね。

乗降デッキと反対側に洗面台とトイレがあります。

洗面台は古典的ながら、自動停止水栓の付いたタイプ。

私がトイレを撮るのは極稀でして、和式の古典的列車トイレなのに…と思うなかれ。

これ、通路側の扉を内側から撮ったモノ。ガイドレール以外の部分がキレイな鏡面仕上げになってるんですね。今でこそ特急車両には多目的室があるものの、この車両が登場した当時は列車内でお召し替えなんて場合、昼行車両であればトイレしか現実には不可能でしょう。

そのため、着替えた後、装いをチェックする姿見代わりになっていたのではないかと思うところです。

ただシュールですよ、男の小用の場合…自身のあーんな姿が至近距離で真横に映るんですから…。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
グリーン1付番無し1160mm
グリーン2付番無し1160mm