JAL国内線ファーストクラス(B777-200) 最終確認時期:2008年12月

JALのSS廃止→クラスJ展開は、現状の好評っぷりを見ると、画期的判断であり正解でしたが、半面で存在した「上澄み」的高付加価値顧客層をANAへ逃す結果も付いてきました。その高付加価値顧客を呼び戻すため、幹線に重点設置されたのが国内線ファーストクラスと言えます。

国内線はクラスJ専業の私なので(笑)、「そのうち体験するべ」と思っていたら、福岡便機材繰りの関係で、ファーストクラス席のクラスJ扱いにブチ当たった次第。折からの強い季節風で、延々2時間近くファーストクラス座席を体験することとなりました。機内食などがなかったことで、逆に座席を色々味わえたのは座席趣味者として幸せでもあります。

座席設計は国内交通機関座席メーカーの雄、小糸工業が担当。シート表地からテーブルまで、世界各地のこだわりメーカーから持ってきています。

画像は全展開状態と基本位置の並び。リクライニング・レッグレスト・フットレストはそれぞれ油圧シリンダによって動かします。この手の座席は電動が主流ですが、私はガス圧が効いている前提で油圧を歓迎します。電動は、細かい調節局面で油圧に勝てません。

大形テーブルを引っ張り出してみた構図。これであれば機内食もゆったりですね、因みに結構ヘヴィであります。

座り心地については、第一印象として「あ、よく造り込んだなぁ」と率直に感じます。クッションの硬さや沈み加減、表地レザーのタッチ感、レッグレストのカーブ形状、果てはリクライニング等の挙動ボタン類の配置まで、着座導線についても思いを巡らせて配置したモノではないかと感心しました。

好き嫌いが出るとすれば、ランバー部分の中央が縦方向にやや狭くに落ち込んだ形状になっていること。ちょっとスカスカした感じを持たれてしまうきらいがあります。設計意図とすれば好みの問題ですし、登場後の時間経過でのヘタリとすれば、要改良箇所になるでしょう。尤も、本運用時はクッションが宛がわれるので、それで適宜補完することとなるでしょう。

座ブトン部分は、幾分高めかな?これは、座席下空間の確保とリクライニング時の座面チルト用スペースも絡んでいるように感じられます。日本人の平均身長前後であれば、膝裏の鬱血を思うとレッグレスト・フットレストを展開することが前提かつ必須となる造りを思わせます。

ヘッドレストは、座席全体のボリューム感からすると少々薄め。左右のウィングアップも少々テンションが低いので、これは要改善ではなかろうかと思います。

座席の仕切部分に目を遣ると、まず目に付くのは大形のパーテーション、内側はストライプ模様処理のされたミラーとなってます。前方には普通席でも見られるオーディオコンソールユニット、その少し上にパーテーション脇の手元用ライトスイッチがあります。客室灯以上、読書灯未満の照度が欲しいときは、これを使うこととなりますが、真価は夜間運用時に限られそうです。

上の方には、アイラインまでをカバーする半円月状のパーテーションとLED読書灯があります。読書灯はフレキシブルタイプで、方向もかなり柔軟に動きます。

前方にマガジンラックが見えますが、今までのマガジンラックであれば、各座席のライン上にセットされていたところ、センターパーテーションのライン上(窓側席は窓側壁面前方)に置くことで、レッグレスト展開時の「蹴り上げ」を防いでいます。良い配置です。

センターアームレスト先端のテーブル部分ですが、カクテルテーブルを兼ねているので、ドリンクサービス時はこのように前方にせり出して使うこともできます。下のガイドレールも露出時の表面処理がしっかりしており、がさつさを感じないところはさすがです。

視覚的に気になるとすれば、アームレストテーブル下の切れ込みですねぇ。テーブル展開時に、ここがテーブルアームのカバー部分になるようですが、何もないときは視覚的なジャム感を感じます。

座席背面は、表皮の処理もピンと張られていますね。座席によって、多少シワよりの当たり外れはありますが、直接座り心地に影響するわけではありません。前席のセンターパーテーションの厚みは、後席になるとマガジンラックという形で実感できます。

アナウンスでも知られる座席下の荷物スペースもカッチリ取られています。ただ、スペース入口のバー形状(アタッシュケースのナナメ置きを想定した三角傾斜)が逆に収納荷物の形状や大きさを、変に制限している気がしないでもありません。尤も、大きい荷物は頭上のハットラック然り、ファーストクラス運用時は最優先となる荷物引き渡しがあるので関係ないのかも知れませんが…。

ファーストクラス。シートピッチが1300mmと、かなりワイドになっている一方で、列を非対称としている(客同士の視線干渉の他、乗務員のサービス展開時に通路反対側の客に乗務員の背側が直接向かないための配慮)ので、このような横面が撮りづらいんですネ。

こうしてみると判りますが、デフォルト状態ですでに若干のリクライニング状態となっており、実際のリクライニング展開量はそう大きくありません。座席背面の機構的に見ると、デフォルト状態で体重を背ズリに掛ると「ゴツッ」とした触感でやや背面が傾きます。これは全ての座席でそのようになるので仕様となるのでしょうが、少々気になります。

なお、2列目(中央ブロックなら3列目)は、背面の仕切り壁の関係でリクライニングが完全展開できない状態で止まってしまうようです。さらに、ファーストクラスの本運用時は各種サービス展開も前方列から開始となりますから、これはちょっと…ねぇ。

座席は十分堪能しましたので、今度は是非ともフルサービス時のファーストクラスのソフトウェアサービスを体験するようにしたく今から貯金に勤しみましょう(笑)。

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