651系電車 最終確認時期:2004年6月

JR東日本初の新製特急車両。無駄の無いタキシードボディが印象的な列車です。当時、すでに併走する高速バスとの競争が念頭にあったことで、速力だけでなく、バスにないゆとりと機能性を内包することが求められました。

普通車の解答は、このR60という座席に結実しました。シートピッチ970mm、特急用新製車としては在来線最大級のピッチでした。そこに航空機を意識したシートバックテーブル、深く倒れるボタン操作の油圧リクライニングシート、読書灯…すべてが目新しく、必要充分でかつ機能美を体現した「作品」と呼べるものです。

目新しさが強調され、座席背面のバックシェルが美しいです。ただし、喫煙車ではこの白さが仇となり、タバコのヤニで黄色に染まってしまったという逸話が残されています。写真は付属編成、バケット詰物が変更された後のR60です。

E653系の登場を受け、リフレッシュが施工される編成も出てきました。これがそのリフレッシュ後、R60改と呼んだ方が正しいかも知れません。バックシェルを止め、アームレストの背面側の形状を変えています。

しかし、必要以上に厚ぼったいモケットとアームレスト上へ張り出し処理を行わないまま、無理矢理シートバックサイドのバケット形状を強調したため、身体にフィットしているとは言い難い背面形状になりました。座席背面の網袋下、それまでFRPで覆われてデザイン的に統一感のあった後部カバー上の部分を(おそらく靴を掛られることから)金属地むき出しのカバーにするなど、統一感のアンバランスぶりが目立ちます。

更に言えば、センターアームレストの長さがイタズラにカットされています。その真意というか、機能性への還元は不明(と言うか意味無し)です。何故にここまで「無駄な手」を入れるのか理解に苦しむところです。

1&2と言う新時代グリーン席の王道配置、超大型のシートが並ぶリラックスフロアです。パンフレットや設計コンセプトには「ホスピタリティ」が謳われていました。

それまでのグリーン車は新幹線のように複数両の連結が無い限り、基本的に全面喫煙席でした。しかし、この形式では車両中央部分にパーテーションを設置し、禁煙席と喫煙席を分けることになりました。後に、吸煙力向上のため、ハットラック網棚上に空気清浄機が増設されています。

車内は間接照明、荷物棚はハットラック、航空機を意識しながらも絶対的な空間は競合相手のバスでは実現不可能な移動空間です。

後日、グリーン席の全面禁煙化を受けて、中央のパーテーションは撤去され、上野側にやっつけ仕事の如く移設されました。そのため、今の車内はストンとしています。

写真は初代から累積すること第3次に相当するリフレッシュを受けた車内です。モケットの変更が特徴的です。

そして、2001年に施工されたリニューアル後の全景です。間接照明はカバー付きの直接照明に、ハットラックは撤去されましたが、全車禁煙が達成されたにもかかわらず空気清浄機はそのまま。その上、空気清浄機の直下にはパーテーションが撤去された為に座席が来ています。

視覚的な連続感は確実に後退しています。グリーンは単に大きな座席が並んでりゃいい、というものでは無いことを如実に感じます。

登場当初から累積すると第2次に相当するリフレッシュ時のR38です。このころ、まだサイドアームレストには衛星放送を視聴できるテレビが設置されていました。

第2次リニューアルの面影を残しつつも、大分頑張って残っていたオーディオユニットが撤去された状態のR8。シートピッチ1160mmはグリーン席標準ですが、その横幅の大きさと絶対的なバケットシートが堪りません。

その後、第2次投入編成にはR9と呼ばれる改良型が投入されています。

フットレストは台座に固定された比較的小型のものです。ビジネス特急の色合いが濃い路線の性格か、向かい合わせでの利用はあまり想定していないようで、テーブルはシートバックテーブルのみ。シンプルと言えばシンプルですが、座席自体がどちらかと言えばコッテリしているので、差し引きでバランスが保たれていると言えるでしょう。

R38です。大型のヘッドレストとサイドの張り出したバケットは、充分すぎる横幅にして初めてその真価を発揮します。座ってみると判るのですが、大型ヘッドレストのお陰で隣席の人の視線が全く気になりません。リクライニング時も後席からの視線や動きに意識する必要はありません。

ホスピタリティという概念に照らすと、これほどハードウェア的に充足したものも珍しいですね。

さて、これはまだパーテーションが真ん中にあった時代の写真。台座据え付けフットレストと折り畳み式のテーブルがセットされていました。

こちら、第3次リフレッシュを経たR8。サイドアームレストの前縁、革張りクッション詰めだった部分が単なる革張りに省略されています。そのため、全体的にエッジが立った印象を受けるのはそこが斜め角度を持っているから、と言う視覚的なものが大きいでしょう。

そして、全展開状態。

第3次リフレッシュを受けたR38。センターアームレストはほぼそのまま残されていますが、やはりサイドアームレストは少々弄られています。全体的なフォルムを考えると、この程度の手入れとモケット表地の変更で終わったというのは良かったのかも知れません…次のを見てしまうと…。

そして、2001年度リフレッシュ施工車のR8です。もう判りません。何故にそのような無駄な切り落としとフォルム変更を行ったか理解に苦しむ悲惨な例です。目に付く部分だけでも差異を挙げてみると…。

・バックシェルのモケットカバー化
・アームレスト上の革部分延長のカット
・ヘッドレストの切り落とし、小型化
・座ブトン前縁の一部切り落とし
・ソデ体の形状変更

結論…ダサいよ、やっぱり(笑)。

全展開の状態…う〜ん、何かこう「重厚感」と言うか頼りがいが無くなっちゃってるんだよなぁ。

R38の側。センターアームレストはわずかに前縁がカットされ、更に革部分が撤去されているので余計短く見えます(ってか、短い)。

しかし、このリニューアルがいかなるセンスで行われたかが本当に判りません。この金属部分が直接触れるサイドアームレストとモケット張りのセンターアームレストのミスマッチ。座った人が肘をかけたらどうなるんでしょうね?

普通なら「驚きます」ね。左右で感覚が違うってのは…ひょっとして、グリーン席に座ったこと無い人が手がけちゃった?おまけにソデ体も無機質というか味気なくしちゃうし…終わったな。

分煙パーテーションは上野側の車端に設置されました。座席予約上では1人掛はC席、2人掛がA・B席です。日射は午前中がAB席側、午後がC席に入ります。

この半端で歪な設えも2004年初夏に、ガラッと変わることとなりました。

JR東日本のグリーン車ロープライス政策は、それまでのグリーン料金概念を崩しつつあり、常磐線系統に至っては回数券に対応した格安グリーン料金回数券を出すに至っています。そりゃぁ、上野〜水戸で750円/1回のプラスなら誰でも使いますがな…。

そのお陰で、一部の長距離運用やビジネス需要に掛かる時間帯の便で満席を出すようになったため、2004年初夏にグリーン席の増設を行っています。

増席は2001年度リニューアルで追いやられた分煙パーテーション台座を撤去し、1人掛はR9・2人掛はR38を新規製造して配置しています。低レベル化改造がなされたとはいえ、15年前のスペックの座席を新たに作らされるメーカー(それも少数ロット…)の苦労やいかばかりか…。

見た目のデザインは殆ど変わりませんが、回転ペダルのゴムカバーが端折られているのがささやかな差異と言ったところでしょうか?分煙パーテーション台座が来る前までオーディオユニットが残っていた車輌ですと、座席台座壁側にその当時の電気コードのなれの果てを見ることができます(笑)。

座り心地は他の座席と変わりませんが、新しい分だけ、気分的にマシって感じですかね?ついでに言えば、この座席増に伴って窓枠に邪魔されず眺めを楽しむのは…

・下り→奇数番号席 ・上り→偶数番号席
となりました。

2人掛席です。座席後ろ、壁側のフットレストは既出の台座から引き剥がされ、返り咲き設置を果たしたものといえますね。

グリーン利用率が上がるというのは営業施策的に喜ばしいのでしょうが、その根元が値下げにある、というのはJR九州の「2/4枚きっぷ」で見られた「利用率アップ・収益殆ど変わらず」現象の様な「周回遅れデフレ」を想起させます。

本来的な収益構造からはあまり健全な方向性では無いように思えますが、逆に言えばその程度が価格バランス的に適正水準だ、ということなのですよね…。651系のスペックをしてこれなのですから、他線区のデフレグリーン席に至っては(略)。

ラゲージスペースです。元々、沿線に多いゴルフ需要のために付けられたと言われています(と言うか、登場当初のパンフレットにはその旨が書いてあった)。

今は体の良い荷物置き場になっており、リネンが置かれていたりします。昔のグリーン車であれば、こんな使い方は絶対しなかったし、させなかったんですけどね…。

グリーン車の仙台側、デッキを挟んだ側には電話室があります。尤も、今は携帯電話が普及しているのであまり使われていませんが…。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1不明970mm
普通2R60970mm
グリーン1R81160mm
グリーン1R91160mm
グリーン2R381160mm