E655系電車 最終確認時期:2017年09月

運転されればその筋の大きなお友達に大人気の1号編成、特に念入りなメンテナンスを受けて来ましたが、寄る年波には勝てぬということか、後継に登場したのがE655系電車。

乗客すべてに和んで欲しい、との考えから付けられた名称が「和(なごみ)」。普段は(?)団体貸切列車として旅行代理店を介したツアーで用いられており、特別車両1両を抜いた5両編成を彼方此方で見ることが多いかも。

何せ名称に真っ向勝負を挑むような、この威圧感バリバリのオラつきシルエットから醸し出される形容しがたい存在感が振り散らされるものだから…ええ、ええ。

編成は全車グリーン車扱いで、通常区画の座席は2&1の3列席となっています。

車内は荷物棚から天井にかけて鮮やかな木質の化粧板に半間接照明で構成され、仕切扉上は鏡面タイプとなることで空間のずん止まり感を和らげています。

後ほど詳述しますが、座席周辺も含めた空間取りがいわゆる3列グリーンらしく奢って取られており、見た目にもゆったり感は感じられます。東日本管内適用のデフレグリーン価格とは異なるレートの扱いとはいえ、やはりグリーン席って「普通席とは違うのだよ」ってくらいじゃないとイカンですよね。

一般区画の座席を見てみましょう。まずは1人掛け席から。

1160mmピッチの配置はグリーン席の定尺みたいなものですね。インアームモニター仕込みの関係で、左右のアームレスト長が揃っていないのは少々気になります。ソデ体はフルカバータイプですが、張り出た部分の意匠にJALクラスJのシルエットが幾分かカブります。

アームレストカバーと手摺り部分は木質化されており、デザイン上のカラーコーディネイト的にアクセントになっています。メーカーは伝統の小糸工業。

全展開状態にて、少し張り出た側のアームレストには多機能モニターが収納されており、運転席に設置された展望カメラ映像から衛星放送・ビデオ番組の視聴にゲーム、車内販売営業がある場合は商品の注文までこなすことができます。

リクライニングとレッグレストは、電動によるスイッチ操作でそれぞれが独立可動します。座面は背面に連動するタイプ。一般区画の座席はデフォルトでそこそこ座れる角度が初期状態なので、ムリにリクライニングしなくても割とイケてます。腰回り両脇からの骨盤支持を志向した形状は良好、惜しむらくはヘッドレストピローのラッチレールにヤレが出てきており要交換な席が多いんじゃないかな、という感。

2人掛席にて。前席ソデ体後端に折りたたみのドリンクホルダーがあり、背面ポケットは大きめのものが見当たります。一見、薄めの背座構成に見えますが、両脇の余寸がたっぷりしており、背面の奥までしっかり上体を預けられることで、良好な掛け心地になります。

レッグレストは座面前端の角度を殺さない独立可動タイプ。板面長が短めなので、ふくらはぎの置き場にどうしても半端感が残ります。座席回転はアームレスト後端にあるレバーのプルアップでリクライニング等の解除と共にロックピンが外れるようになっており、軽快にして確実感の残るクリック&レスポンスは操作してなかなか心地よさがある程度に良好な動作タイミングです。

近鉄50000系「しまかぜ」プレミアムシート(天龍工業製:YR273・274)にも、同様の機能を持つボタンがソデ体後端にあるのですが、ボタン押込と動作開始タイミングのラグがありすぎて、直感さが無いというかイラつくフシが残るのと対照的です。クライアントの考え方の違い、という解釈もできますが、この点は小糸工業に一日の長。

このカットでチラッと見えるのですが、1・2号車の座席にはセンターアームレストやモニター仕込み側のソデ体前端にAC100Vコンセントが1席1個相当で設置されていますが、これ、後述の3号車VIP席や4・5号車の座席には設置されていません。

この編成が本来の用途で運用される際の座席の割り振りはどうするんだろ、という思いが去来して今も実は謎だったりします。機能の差を座席の格と考えれば、宮内庁や関係省庁などの侍従・役所枠がコンセント付区画なのか、取材機材やモバイル機器の使用を念頭にすれば報道陣等の外野区画なのか悩ましいところ。

宮様がご利用される特別車両は3・4号車間に連結されるトコロからすると、そこから1両分離れる1・2号車は下座扱いとも考えられるところですが、座席機能としてはコンセント付の方がやはり上と捉えるのが自然なところでして、うーん。

3号車は通常組成される中では上等区画となる、開放型のVIP席と個室で構成されています。通常、よほどの運用でなければ個室は開いてないので今回、中は見られず。

2号車側に開放型のVIP席とされる定員9名の区画があります。パッと見て座席がなんとも黒々してますね。各社のツアーや貸切形態にも依りますが、ここを申し込みの早い順に割り当てたり、追加料金を取ったりして使わせていることが多いようです。

座席のソデ体自体は一般区画席と同じですが、座面や背面が革張りで、両サイドのウィング部分も詰物でムチムチに張り出した肉感的な座席になっています。

革張り座席というと、かねてから評価が真っ二つに割れがちですが、小糸工業がどこかの九州特急みたいなヘマしないでしょ、という訳で滑り量や掛け心地の点からは多少の暑苦しさ感こそ残りますが北海道のそれに近い感じになっています。

背面とヘッドレストピローの形状からして、この席はある程度のリクライニングが前提となった座席と言えます。ま、VIP区画だもんね(何か違う)。

荷物棚はハットラックタイプ。651系や251系以来のお見かけですね。

蓋部分はしっかりした厚みで造られており、従来のそれとは異なり、開け閉めで大きな音を立てずに済むような仕掛けが施されています。ややもすると「ちゃんと閉じたのかな?」と不安になるかも知れませんが。

3号車、VIP室前にあるサービスカウンター。売店と共に車販基地の機能も併せ持ちます。4号車にも同様の設備があり、VIP室や特別車連結時に通路へ無用の往来が起こらないよう、いわゆる関所機能を果たすこととなります。

VIP室前の通路部分。絨毯の毛足が他の区画と俄然異なっており、庶民階級のワタシ風情にはとんと歩き慣れない風合いです。いわゆる「足が取られそうな床」って感じ。

また、通路天井部分のドーム状の天板、他の部分と木目や風合い、向きが異なっており、ここだけ仕上げが異なっているんだな、ということが理解できます。

ストロボオフで、普通の見た目にはこんな感じになります。

通路折り返しの妻面、下にはヒーターが見えますが、ここだけ壁面仕上げが他と異なっています。

本来の運行時には、この先に連結されるのは特別車両。つまり、そういう暗示です。

4号車売店区画裏にあるスポット。ここで立ち話しながら、景色を眺めることができるようです。

通路折り返しの機能と共に、右脇のキャビネには何が入ってるんだろう、みたいな期待感が見え隠れします。

どの号車も、デッキと客室区画の間には機器室が挟み込まれ、視覚的に緊張感と期待感を持たせた長い通路があります。

壁面のパネルに対し、横方向に通されているのは手摺り。

ストロボオフで撮ってみたらあれまビックリ、壁面パネル上方にはパネル越しに間接照明があり、通路部分はスポット照明、そして壁面パネル下部に青色のLEDがガイドランプの様にセットされており、壁面への反射と相まったデコレーションです。

デッキ区画と絡めるとこんな感じ、いちいち特別感を演出する辺り、ニクいねぇ。

この長廊下、一番長いのはドア・デッキの無い1号車。2号車から乗り込む形となり、車端部分にトイレや洗面台が仕込まれているという事情もありますが、なかなかこれが松の廊下気分。

その車端のトイレ(男性用)。

各仕切扉手前と乗降ドアに面する通路部分には、紫をベースとしたカーペットが敷かれており、いわゆる汚れ落としと共に、靴音を客室へ響かせないようにする配慮が見えます。

5号車の車端部。左奥には男性用トイレがあり、手前には待つ人向けのジャンプシートが仕込まれています。

この列車の凄いのは徹底した防音。走行音が小喧しいのは、せいぜいトイレの手洗台配管部分からくらいなもので、それ以外の部分、特に客室内は遮音についてかなり配慮されているように感じられます。

モロやクモロ区画に座っても、モーター音を殆ど気にしなくて済むのだから正直凄い。というか、他の形式も(特急チャネルなら)もうちょっと配慮してくれよ、と思うこと多々。

で、ジャンプシートを出してみるとこんな感じ。座面色は何に近いかな…あ、東武500系の座席色が一番近いかも(笑)。

車いす対応トイレ、広い。

そして最近の車両ではすっかりおなじみの温水洗浄便座もデフォルトで設置されています。床…これ、大理石…だよね、たぶん。

ドアの内側は、無機質というか清潔感というか真っ白をベースにしています。

で、ジャンプシートはこんなトコロにもセットされておりまして、ここ座るのどういう立場の人なんだろう、みたいな。

5号車のトイレ隣にある区画にて、背当て部分は役に立ってそうで立ってなくて、という程度のモノですけど。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
グリーン1不明(小糸工業製)1160mm
グリーン2不明(小糸工業製)1160mm