2000系気動車(試作車:TSE) 最終確認時期:2013年11月

未(非)電化・山間線区の多い四国、速度を落とさず拠点間を結ぶことは至上命題のような感すらあります。電車で確立していた振子機構ですが、気動車はエンジン動力を台車に伝える伝達機構の構造や、シャフト回転と車体傾斜の反作用が課題となり、なかなか実用化に至っていなかった事情があります。

2000系試作車(TSE)は、エンジンを2台搭載してシャフト回転の反作用を打ち消し、制御振子機構で万が一の故障時も最小限の支障に抑え、振子状態でも動力を伝えられる伝達機構を開発、その上で機器類を床下に収めて低重心化を図る…と、新機軸の塊でそれらに立ち向かったことになります。

この成果は、後に智頭急行HOT7000系気動車・JR北海道281/283系気動車・JR西日本187系気動車など新世代気動車特急に引き継がれ、ディーゼル特急の高速化をもたらした記念碑的車両でもあります。

2000系試作車、肝心の走行性能・安定性は勿論、乗り心地などについて様々なデータを取ったそうです。試作車は3両、「宇和海」の固定運用に入っているケースがほとんどです。

1両単位で回せるディーゼル車両の常か、検査などの都合で量産車に差し替えられていることも多いようで、3両揃った姿に巡り会えない人も多いとか。

2001号車の車内全景です。回転油圧リクライニングシートが並んでおり、荷物棚の下にはバスでおなじみのスポット空調が備えられています。

スポット空調は量産車には引き継がれなかったので、やおら遭遇した時の判断材料でもあります(特に中間車)。

なお、経年による部品交換を繰り返しており、ところどころ吹出口ツマミ形状が変更(交換)されている場所が目に付きます。

中間車となる2201号車の車内全景です。輸送力上等と言わんばかりに座席がズラッと並びます。

2000系は総じて側窓が大きめなので、何となく開放感が感じられますネ。

松山側の先頭車となる2101号車の全景です。なお、手前側が宇和島側の向きでの撮影となっています。

2001号車を八幡浜向きで撮った全景。進行方向向きに7列分が指定席区画となっており、リネンが指定席用のブルーのものになっています。

2101号車のちょっと目に付く部分を後ろ側から。後述しますが、宇和島側4列分が改座区画となっており、バックシェルタイプの座席が設置されているのが判ります。

試作車座席です。量産車と比べ、まずフレーム形状が異なっていることは勿論、座席脚台部分に上下自由のバーレストが固定設置されていることが判ります。

座席自体は布地こそ異なりますが、R55よりRS380系列テイスト、アームレストの長さ感については、R54に近い風合いで、シルエットバランス的にはやや寸足らずの気があります。

フィッティングは、この頃の座席として身体追従性の良い形状を保っているのですが、クッションがヘタるとやや大味になります。バウンス感としては、比較的柔らかめのクッションになっています。

バーレストは客の操作で上下自由になるのですが、2列1枚なので、どちらかが使っていると、足下が窮屈な思いをする人が出る訳で…量産車には引き継がれなかった設備ですね。

指定席はブルーのリネンが印象的です。座席の配色と対比すると、やや埋没してしまうきらいがあるのですが、縫い付けの「指定席」を浮かせるための工夫、という解釈になろうかと思います。

コチラでもバーレストをハネ上げた状態で。

脚台を見て貰うと、上に掲げた座席のものとカラーが異なっているのが判ります。確か青い脚台が2201号車だったと記憶しております。

試作車には中間に車掌室、先頭車にテレビやソファコーナーなど、特急用途でコケたら団体利用に変えるための想定設備がありました。

しかし、現実の2000系は大当たり。特急列車として運用を全うすべく、量産車とも共通の運用をこなすため、座席が後に増設されています。

そのため、当時のソファ部分にはバックシェルタイプの座席が新規設置されています。

新座席と在来座席の境目。ここにソファがあり、イベント車両への転身も想定に入れられていた名残として、マイク用端子口が残っています。

ドアは戸袋が不要で、気密面の配慮もあったのかプラグドアです。

ドアデッキ脇に隠れるように収納されているのは非常用ハシゴ。瀬戸大橋を通行する運用に就いていたことから、ハシゴは必需品の模様。ここに収納されているんですね。

ドーンと大きい空間は、今となっては無駄に大きい荷物置場ですが、かつてはアコーディオンカーテンで仕切ることができた空間です。

車販準備室的な用途もあったのではないでしょうか。

客室部との仕切扉は、新幹線100系ナイズされた縦長窓のセンサー式。

このタイプ、感度が良すぎたりすると、無駄に開閉する上に、その稼働音が結構耳に付くんですよね…。

荷物置場の反対側は、元電話室。カード式公衆電話が設置されていましたが、現在は撤去されてしまいました。

先頭車デッキから、中間車方向への通路の光景。

直線で象られた設えの中、洗面台の半円カーテンが存在感を顕わにしています。

2号車デッキから業務室ドアを両端に、先頭車トイレ方面への通路の光景。

四半世紀前の登場であり、このモノトーンが客室外配色としては普通だったなぁという思いを今に致します。

トイレの反対側には洗面台があります。傾斜三面鏡ではなくシンプルな1枚鏡面、全体で見ればくたびれていますが、周辺艤装も当時の標準的に先進タイプを用いています。

これだけ機構的に画期的な車両ですから、何も貰ってないワケがないってモンですね。

この他、恒例のローレル賞も貰っています。派手さはないけど、中に秘めたスピリットは今なお熱いモノが伝わってきます。体験はお早めに。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通(試作車)2付番無し(小糸工業製)980mm