381系電車(ゆったりやくも) 最終確認時期:2007年11月

山陰−山陽連絡特急として日夜活躍する「やくも」、でき映え・評判は別として、アコモデーション改良という点からは比較的取り組みが果敢な列車系統だと思っています。シートピッチ拡大や、リクライニング角度拡大施工など、車両制約の中でかなり思い切った手の入れ方だと思います。

それが仇となり、テーマもポリシーもバラバラな車両が混結され、カオスなヴィジュアルとなったものもあります。イメージ戦略上は好ましい状態と言えなかった事情もあるのでしょうか。

今般、統一イメージと全面的なアコモデーション改良を期した「ゆったりやくも」が登場しました。大山冠雪のホワイトグレー、出雲の巫女をイメージしたディープレッド、山陰の豊かな自然をグリーンとし、アーバンエリアで見られる配色イメージとしています。

そして、ゆるキャラの波はここにも押し寄せています。多分ながら、JR四国ならば、流麗なロゴデザインやシルエットデザインを造ってくれたように思えてなりません。

それでは、車内へ入ってみましょう。普通車は、白系統の化粧板をベースに、座席は勿論、照明・空調吹出口・床面まで徹底したリニューアルが図られています。画像は昼間の撮影ですが、最近のJR西日本デザインの例によって例の如く、夕暮れ〜夜にかけてのムードある車内の方が似合っているようです。

普通席は基本的に2&2の4アブレスト配置ですが、空調ダクトに引っかかる部分だけ1人がけとなっているのは以前と同じです。

2人掛席は、天龍工業製のWEC147916が1000mmのピッチで備え付けられました。ソデ体から背面のシルエットの通り、WRK243の派生形の座席です。全席禁煙を受けてか、WRK243よりアームレストカバーが灰皿分前方に張り出しています。

従来の同系統座席より、座面・背面の両エッジが立った、少し視覚的に「派手」な座席です。従前のJR西日本の座席と同じく、背ズリ腰部の角度処理がデフォルトでリクライニングが要らない程度に取られており、座ったままでも意外とイケてます。両脇の張り出しによって、振子動作でも良く身体をホールディングしていると思います。惜しむらくは、座面が少々高い気がすることでしょうか。

座席中央部の仕切部分にも小さい工夫。座席と正対した状態で見ると、座席のセンター・サイド両エッジ幅(盛り上がり幅)が異なっています。センター側が両サイドより+1cm幅広となっており、都合2cm余計に取られています。利用者が着座すると、それぞれ(何となく)外側を向くようにして、肘掛ご近所戦争を緩和しようとする意図が見えます。尤も、これは窓側にも適切な余寸が確保されていなければ実現できないマネであります。どっかの安造り特急車とかどっかの新幹線がコケたら大変な会社の今の空間作りでは無理な発想とも言えます(笑)。

その他、窓側下部にあったダクトが移設され、座席脚台下が空間になるなどで、座席周辺の居住性は目に見えて向上している良いリニューアルとなっているように感じました。

1人掛席はWEC147915が設置されています。空調ダクト部分に引っかかる部分は、このような1人掛となります。通路側席と同じ位置の設置なので、逆に窓側がやけに広がっており、あまり落ち着くような気はしません。

そうそう、普通席については、座席部分が穏やかに嵩上げされています。振子動作には影響が無い程度なのでしょうが、振子車両でハイデッキ気味な床面というのは思い切った方法ですね。

リクライニングやテーブルの全展開状態。

テーブル右上を見ると、ペットボトルや缶ドリンク用のセットスペースの他に、車販コーヒー用と思われる小ぶりの2穴があります。右に左に…の振子車両らしい設えです。

4号車デッキ部分には、このようなスペースがあります。全車禁煙車となったため、喫煙者用のスペースが用意されました。

扉を開けるとこんな感じ。中には折りたたみの椅子が据え付けられており、立って2名・座って1名のまさに「個室」です(笑)。

トイレについては、全洋式化がなされた他、男子小用が用意され、洗面台と合わせて機能的な空間となりました。

先のデッキ共々、木目調の内装でイメージを統一しています。

いよいよグリーン席です。編成の出雲市側に位置し、1&2配列(2人掛は出雲市行で左側)のシンプルな3アブレスト配置です。

化粧板や天井周りの処理は、普通車と同じイメージで造られています。

1人掛は、小糸工業製のWRK115が備え付けられました。表地のカラーや表地の風合いを別にすれば、283系電車のWRK113そっくりさんです。というか、フレームは同じです。

381系は、窓が2重窓で框が無いのがそれまでのイメージだったのですが、グリーン席は以前から窓枠の交換と同時にガラス1枚窓となり、ベネシアンブラインドはカーテンに取り替えられています。

全展開すればこんな感じ。座ってみれば、安心の小糸工業クオリティが楽しめます。一見、平板のように見える背ズリですが、意外としっくり来ます。座席は見かけによらない好例です。

2人掛はWRK234が設置されています。フットレストは跳ね上げ式となっており、アームの部分にグリーンマークが型抜かれている例のパターンです。

WRK113/232では土足禁止での利用を想定されていたのですが、今回は、板面からすると土足オンリーの利用を念頭に置いているようです。

少しナナメに見てみると判るのですが、センターアームレスト周りの背ズリ処理が変わっています。

展望重視でセンターアームレストの間には空間があったWRK232と異なり、ピチッと壁のように背ズリが両サイドから張り出しています。これも「ゆったり」の狙い?

通路の関係で、デッキ側1列のみ1&1配列となっており、岡山行きであれば2列目の通路側はちょっと気まずいポジションとなります。目隠し兼フットレストスペースとしてこのようになっています。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1WEC1479151000mm
普通2WEC1479161000mm
グリーン1WRK1151160mm
グリーン2WRK2341160mm