12系客車(奥出雲おろち号) 最終確認時期:2016年10月

奥出雲、神話の里から霧のローカルジャンクション備後落合まで、スイッチバックとおろちループが眺められることで有名な木次線。土休日を中心に走るのが、地域ジョイトレの「奥出雲おろち号」です。

通常は木次発着ですが、たまに出雲市発が居たりします。

専用塗色のディーゼル機関車が牽引しますが、客車の反対側には、改造で運転台が取り付けられたトロッコ車が連結されてます。

最盛期は夜行急行まで設定され、不夜城の感もあった陰陽接続の要、備後落合駅にて。今は来る人も少なく、比較的広大な駅構内は閑散としています。私が学生時代にここへ初めて来た時は、まだ始発急行列車が数本設定されていたのですが、その後、あれよあれよと本数が削減され、なかなか秘境駅ぶりが加速した感もあります。

編成は客車とトロッコ車の2両となっており、客車側は悪天候時に備えた控車。つまり、トロッコ車の定員がそのまま編成の定員となっています。この辺、JR四国の「しまんトロッコ」と同じような運用です。

なので、客車入口にはこのような指定席のステッカーがあったり。

トロッコ車は窓が大きく切り抜かれた開放的な車内となっています。床や座席部分の木質感と、壁面から天井への立ち上がりの寒色系塗り物感のコントラストが印象的です。

何というか、バラック然とした海の家っぽさがあったりして…。

トロッコ車の座席は、木質ベンチ席の4人ボックスが基本になっています。この座席、嵯峨野観光鉄道の客車のそれと同じパーツだったりします。うまい具合にローコスト指向。

クッション性ゼロのボックス席ですが、他のトロッコ車にありがちな元貨車ではなく、出自が団体用・急行用客車なことから台車がエアサスなのも救いで、乗り心地はそう悪くありません。ま、座り疲れたら隣の控車に行けば良いのでお気楽ですね。

その他、大形テーブルにドリンクホルダーも取り付けられており、ユーティリティ上の不足はないでしょう。

その他、ドアデッキ近くの座席は窓向きのベンチ様に囲われた変形ボックス席になっており、家族連れ客ならこっちの方が楽しいかも。

眺望の点では、スイッチバックやおろちループなどを考慮すると偶数番号席が人気ですが、季節によっては容赦なく日射が来るのでその辺で要考慮。ただ、木次線自体が右に左にのクネクネ路線なので、あとは運次第。

あと、ホームからの名産品等の購入だと、何となく奇数席の方が勝手がよかったような感想は持ったりします。

客車側運転席は左側のボックスに集約されており、ドアデッキ周辺はとても開放的です。

沿線各駅近辺のお店や企業が車内販売で乗り込むので、そのスペースでもあります。お蕎麦にお弁当からデザートまで、入れ替わり立ち替わりとは、この列車のそれを形容するにふさわしく、色んな販売物があります。

モノによっては、片道しか来ないモノや数が少ないので要予約みたいなのもあるので、事前に調べておくと幸せになれると思います。

車端、機関車側のデッキには美術館の監視員席のごとく、ベンチシートが1脚。その隣には記念スタンプ台や郵便受けを使ったアンケート用紙入れがあります。運行時は、沿線ボランティアガイドの人が休憩用で座ってることがあります。

その壁面には非常停止弁(車掌弁)、右側には配電等の制御盤と、地味にこの列車の運行を左右する重要パーツがギュッと詰まっている場所です。

先頭部、中央から右半分は旅客に開放された展望席。スイッチバックの時なんか、みーんなここに集まります。

下半分の窓は固定されていますが、上半分は開けることができるので、夏なんか…開けるよね、みんな開けるよね。トンネルに入ると超絶涼しくなりますけど。

照明は、通路部分に裸電球がポツリポツリ。いいんじゃない?

ガードがありますが、ええ、本当に電球オンリーです。将来的にLED球に換えるのかな? そうなると、風情がスポイルされそうで悩ましいですけど。

車内中央の天井には、ボコッとユニットが飛び出しており、トンネル区間に入ると龍のデザインがLEDで描かれます。

色が次第に変わっていくので、割と見飽きませんし、照度もギラギラせずほどよく鑑賞できます。

デッキ近くにはこんなのも。確かに、奥出雲の風景や雰囲気を肌で感じられる素敵企画列車だと思います。

出雲大社や一畑電車だけじゃなく、こんな列車も楽しみに加えるべきだと一押し。

ドアは客車時代のそれをそのまんまなので、ステップの付いた折戸です。

主要各駅での停車時間はそこそこたっぷりの同列車ですが、いかんせん沿線運行頻度の背景もあるのか、飲料水を調達できるような環境(駅に自販機)が乏しいため、車端には清涼飲料水の自販機があります。いや、これ重要。

お値段は市価相当で、妙なボッタクリ価格にはなってないのが安心経営(笑)。

控車に行ってみましょう。

「ちくま」から「だいせん」へと、定期列車としての運行範囲は結構なものとなる生粋の急行車の生き残りでして、私も学生時代の旅行で「だいせん」をよく使ったので、その頃にもお世話になっていたかも。

控車の性格上、トロッコ車の座席配置や番号と連動させたボックス形状の配置をデフォルトにしていますが、1991年頃に北陸特急の改座で蹴り出されたR51に改座されたまま並んでいます。

これは割と特筆に近いと思いますが、メンテナンス状態が大変良好で、床面や壁面が非常に綺麗なんですね。運行頻度が少ないことも影響していると思いますが、変にうらぶれた感がなく、客車として自立した雰囲気を感じられます。

R51ではありますが、すでに急行列車として現役当時にリクライニングストッパーは追加施工されているので、簡易リクライニングとは言わないのが基本となります。

この座席、ヘッドレスト部の後頭部との接合は悪くないのですが、ランバー部分や座面の形状がどうにもイマイチだったことと、やはり登場当時のリクライニングがロックしない、というのが評判にマキシマムな影響…。

ちょっと失礼して、座席を回転させてみると、そうそう、当時はこんな感じでした。

座席表地こそ交換されていますが、バケット改造や背面テーブル等の増設も受けておらず、ほぼ現役に近い姿となります。

壁面の小テーブルは、キハ58系による急行「砂丘・丹後」の普通席に改造設置されたのと同タイプです。木質パーツを使うの、JR西は意外と早かったんですよね。

こちらも、デッキ周辺はそのまんま。トロッコ車のような開放感はありません。

そして、ある意味国鉄車っぽさが残るくずもの入れの周辺。国鉄フォントのそれと、JR後のステッカーの対比がなんとも。

昨今の車両だとある程度分別回収となっているので、何でもかんでも放り込めちゃうこのタイプは逆に新鮮?

長距離車両が出自なので、洗面台も独立したものが残っています。

トイレも、和式ですがちゃんと設置されています。

男女共用マークというが、世相をなんか反映している感もありますが…。

車掌室付きの車両なので、連結面側はこんな感じ。

機関車のお顔がど迫力でコンニチハ。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通4ボックス1620mm
普通2R51940mm