24系客車(開放A寝台) 最終確認時期:2004年11月

東京駅、夜の主役、と言えば一頃は華々しい寝台特急群でしたが、今は八重洲南口からの夜行バスに取って代わられた向きもあります。そんな東京駅を毎日23:00に出る「真の夜の顔」とも言えるのが、寝台急行「銀河」です。

ネームドトレインとしては昭和24年から、列番のみの時代から含めれば、昭和初期からの長い歴史と様々な逸話を乗せてきた列車ですが、その「格」は高く、急行ながらいち早く20系・14系・24系化がなされています。

グリーンレス昼行特急が幅を利かす昨今で、「名士列車」の伝統を今に語り継ぐ孤高の開放A寝台車を連結しています。

写真はその室内全景。この光景を撮るためには、物理的にA寝台券が必要です(後述)。

室内側のデッキ仕切扉(その1)。形式プレート・寝台番号札・メーカープレート・禁煙マーク…となかなか豪華絢爛です(笑)。号車札の上に付いているのは豆球のユニットです。深夜帯に車内減光した際に号車を確認するためのもの、と言うわけです。う〜ん、気配り。

デッキ仕切扉(その2)部分をデッキから撮ってみました。向こう側に見えるのが先ほどのデッキ仕切扉(その1)です。外界と客室内は、2枚の扉を挟んでいます。昔のグリーン車も客室内に入るには仕切扉を2枚通過する必要がありました。

乗降口から乗ると、この通路の左側にある車掌室で待機している車掌が乗車券・特急券・寝台券をチェックします。そして、晴れて客室内に入れるわけです。A寝台は電源車の後に連結されており、客室内に入るためには車掌の「検問」通過が必須となります。A寝台がA寝台たるステイタスの名残であり、現実問題として相応の料金を支払う人へのセキュリティ・サーヴィスの象徴でもあります。

そのため、先ほどの客室内を撮るためには「正規乗客・一番乗車」を果たさなければ無理、と言うわけです。正直、サイフ的にもタイミング的にも厳しいモノがあります(苦笑)。

車掌室の反対側(富士山側)には喫煙コーナー(兼ミニロビー)があります。天井部分には吸煙・空気清浄機のユニットが見えます。その座席形状は、開放A寝台の昼の座席展開状態を彷彿とさせるものがあります。

しっかし、この内装板の木目調が良い味を出しています。これはこれで、今時スゴイ貴重品になりつつありますね。

喫煙コーナーの後ろ側には更衣室があり、ここで浴衣に着替えることができます。普段、多くの人が自分の寝台内で器用に着替えてしまうので、ここはあまり使われていません。

更衣室の反対側にはシャッター式の荷物室があるのですが、ここを空けるのが面倒くさい車掌さんですと、ここに荷物を置くよう案内するケースもあるとか…。

扉は内開き、扉に隠れる側に収納式のジャンプシートがセットされています。

電源車側に行ってみると、トイレの反対側には三面鏡付き洗面台が2台あります。設えはリフレッシュされており、蛇口は自動水栓になっています。

ここまで見ると気付かれると思いますが、A寝台車内の照明は基本的に全てカバーが掛られています。

洗面台と客室の仕切部分には冷水器がセットされています。日立製のもので、本体左中央にメーカーロゴが入っています。

喫煙席部分です。えんじ色の段織りモケットに白いリネンがまぶしいですね。通常のこの手の設備ですとリネンなんて想像の範囲外なだけに、特別な空間を意識させる役者とも言えます。

反対側の座席です。窓側には収納式のテーブルがあり、深夜帯に寝付けない人がここで買い込んだビールを…ということもあるとか…深酒と大トラは迷惑行為ですのでやめましょう(笑)。

最近になって、このミニロビーをはじめとしてモケットの色調が改められた車両が登場しています。上の写真と比べると、頭上の非常灯の有無は車番の差。

座席に近寄ってみるとこんな感じ。正直申せば、その前時代的な色調をして、いかにも特別車両という風合いがちょっと薄れてしまったのは趣味的に残念なところです。

寝台本体です。壁に装着されている設備は上から順に、荷棚(座席展開時のヘッドレスト部分)・照明装置・小物入れの網袋(メガネ入れ)・鏡(斜めに固定できる)となっています。座席展開時は、これらがヘッドレストとベッドの壁際部分のユニットに隠れます。

枕元にはハンガー・浴衣・スリッパ(持ち帰り可)がセットされています。スーツなどをハンガーに掛ても、その掛先が一見見あたりませんが、下段の場合は上段の船底部分窓側にハンガーを掛られるような金具があります。ここに掛ると通路から遠いところに置いておける分、不安が和らぐでしょう。

荷物棚については、座席展開時にスピーディーに作業ができる裏返しとして、ふとしたショック(下からの突き上げ)で支えのバーもろとも「ガタン」と落っこちてしまう場合があります。

こちら、足下側です。荷物棚があり、布団側には掛布団がセットされているだけです。

この列車でA寝台とB寝台の決定的な違いと取れる1つに、敷き布団の有無があると思います。B寝台は極端な話、座席にシーツをかぶせたものがベッドですが、このA寝台の場合はその座席の上に改めて敷き布団が掛かっています。

ただ、それだけと思うなかれ、という奴でして…これが寝てみると列車の振動をかなり和らげています。極言すればスプリングの上に寝ているB寝台とは違うと言うことが体感できると思います。補足ではありますが、プルマンスタイルの宿命か、583系電車の寝台展開時は、B寝台でも敷き布団がセットされています…。

上段寝台にはこの開放A寝台と583系電車の中・上段にしかない開閉小窓があります。ここは指定外の寝台区画でしたが、車掌に「ベッドに寝ないこと」と言う、揺れる列車内では体勢的になかなかデンジャラスな条件を課せられた上で許可を頂いたものです。

この上段寝台、セット時には機構の動作スペースの関係で壁との間に僅かな空間ができてしまいます。なので、上から下をほんの僅かですがのぞき込むことができてしまいます(笑)。

小窓を開けるとこんな感じ。デフォルトでは閉められています。

下段寝台の寝台間には1区画置きに左右交互で足下灯がセットされています。

このカーテンにはマジックテープで開閉できる換気用の小穴があります。寝台内はハナっから禁煙なので、決して喫煙用途というわけではありません。可能な限りの「気配り」の賜物です。B寝台でも個室がメジャーになった今ではその時代認識のギャップに驚かさせるモノばかりです。

そして、この開放A寝台に乗ったときにチェックして欲しいのですが、枕の位置は通路を挟んで左右で異なっています。視線を合わさせないようにする配慮を感じます。そして、頭同士・足同士が向き合うように枕方向はセットされています(これは電気配線を集約させる、と言う機構的な理由もあるのでしょうが…)。

プライバシーを重視する現代にあって、ノーマルB寝台の倍額を払ってこの設備と機能、私の視点では勿論「ボッタクリ」の他何者でもありませんが、鉄道趣味として古き良き時代のVIPが過ごした空間に浸れるノスタルジー料金込み、と考えれば貴重な逸品と言えるでしょう。ご利用は計画的に、チャンスはお早めに。

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