100系V編成「グランドひかり」…編成中央に組み込まれた堂々4連のダブルデッカー、東京駅を午後出発、長駆博多まで悠々と駆け抜けた編成としてつとに有名です。隠れて275km/h対応の速力も持っており、高速試験も行われましたが、編成重量と騒音規制の前に営業運転での実現は断念との由。

X編成・G編成の衝撃もさることながら、この編成が出たときは、最新鋭だった300系そっちのけで「これで、行き着くところまで行ったかな?」と感を新たにし、関東モンとしてはなかなか乗る機会の薄い「あこがれ」列車の1つでもありました。

画像は2002年11月23日に1往復だけ運転されたさよなら列車の1コマ。新神戸駅で編成シンボルの4連DD車部分を撮っておりました…いや、この日は本当に偶然ながら鉄道座席趣味者によるオフ会が大阪であったものですから^^;。

V編成2人掛普通席のWRK205です。基本的な構造はR53ベースですが、JR化後の独自付番がなされています。3人掛席はWRK301となっています。

基本的な仕様にも大きな変化はありませんが、シートバックテーブルの枠処理が若干異なっています。座席表地や詰物形状も、ややバケットが強調された独自スタイルを保っています。智頭急行HOT7000系の普通席がこの座席の派生系列と思われます。

V編成が充当される運用は、時刻表上で「グランドひかり編成」と記され、並み居る「ひかり」でも別枠扱いでした。

先述の通り、東京午後発が基本だったので、観光等で使えることは滅多にありませんでしたが、運用終了の数年前から突如V編成による東京早朝発運用ができたことで、ダブルデッカー階下席が知る人ぞ知る穴場席になりました。それ故、知っていながら時間帯が悪く、忸怩たる思いをしていたビジネスマンや旅行者を中心に、指定席争奪戦の筆頭に挙げられる人気席になりました。

8列、32名のこぢんまりとした空間、階下席特有の落ち着いた雰囲気は、冴えない眺望を補ってあまりある設備でした。テレビが壁に掛られており、主として山陽区間でビデオ番組の放映がありました。

階下普通席のWRK206です。幅広座席、ゆとりある肘掛、オーディオユニット…夜運用時のここは知る人が多く、私も指定券奪取にかなり苦労した経験がありました。

席番的には7・9・10号車の15〜22番です。普通車で9・10号車というのはこの編成だけ(逆説的にグリーン車で7号車というのもこの編成だけ)だったので、マニア的にはV編成の乗車証明をここでやった記憶があります。

「グランドひかり」のグリーン2階席は、100系X1編成以来発展し続けてきた、拡大路線・肥大化・重装備化を基調としたアコモデーションインフレの終局点、爛熟期とも言える陣容を備えています。

WRK207形座席です。回転油圧リクライニングシート、シートテレビ、オーディオユニット、車内販売呼出ボタン…それに読書灯・スポット空調と、座席周辺で必要なユーティリティをほぼすべて備えた空前絶後・新幹線にして最も奢られた環境だったと言えます。

そのいずれもが、約6時間になる東京〜博多乗り通しを念頭に置いたものであることは言を俟ちません。

こちらもV編成のWRK207。モケットの柄と色が異なっています。シートピッチは1160mm、3段フットレストは国鉄時代からの伝統と言ったところでしょうか。

この座席からテレビユニットを抜いた座席が、WRK239形座席であり、0系「ウエストひかり」編成の一部グリーン席で装備していた時期がありました。しかし、後にその座席は南紀系統の381系グリーン席に移設されています。

そして3パターン目。装備は変わりませんが、これまた座席色や柄が微妙に異なっていました。国際線ジャンボ機の設えの如く、編成ごとに微妙に異なる辺りが凄かったというか、何というか…。

座席自体は、日本発条(ニッパツ・日本リクライニングシート)が納入した物になっています。同社は鉄道シート事業から撤退(一部パーツを除く)しており、一頃は小糸工業に次ぐ規模と数量の座席を入れていただけに、そのメンテナンスが大変だったようです。

1人用座席、WRK103です。個人的にはV編成乗車証明は「指定券(グリーン)・7号車14番D席」で行うのが一番マニアックだったのかな?と思います。

V編成として華々しくも美しく、最後までエース列車「ひかり」から転げ落ちることなく役割を終えられたのは、希有にして幸せなのかも知れません。

1人掛セクションで全展開。後ろに電話室兼更衣室があるので、人が来ると落ち着きが無くなりますが、携帯電話が普及し、東京〜博多のロングラン運用が無くなったため、電話室に入ってくる人はほぼ皆無でした。

しかし、この電話室内で販売されているテレホンカードは500系の図柄…時代を感じますね。

東京側1階デッキへの階段部分です。