名古屋市科学館 最終確認時期:2008年11月

営業運行から姿を消したとはいえ、その名は鉄道史に燦然と輝く「0系」。一般的に、このような車両の新規製造前には、機器配置や取り回しなどを検証するためのモックアップを造るのが常であります。

名古屋の中心エリア、伏見にある市立科学館には、その譲り受けたモックアップが鎮座しています。上下に少々余裕がない造作や、量産車とは何となく異なるカーブなども納得。

室内をイメージした部分には、何とも見慣れた座席が残っています。2人掛がD23、3人掛がD32ですね。0系製造当初には存在していない座席であることは確かであり、途中で展示交換されたか、モックアップの授受時に差し替えて寄贈されたか、と思われます。

D23を見ると、座席本体の表地は色調こそ違えど、何とも似たストライプのものに交換されています。一方で、ソデ体側面の飾りモケットは原色で残っています。小児の指挟み事故が考えられたのか、リクライニングレバーが撤去されてしまっています。背面テーブルはユルユルにこそなってはいますが、そのまま残されています。

こうしてまじまじと見ると判るのが、アームレストの緩やかなカーブと角度、そしてソデ体下部の前方への伸び込み造形の美しさが際立ちます。ソデ体の飾りモケットが、さらにイメージを際立たせているところなんかもう…正直、座席趣味的にカッコイイとはこういうことだと思います。

3人掛のD32、こちらもリクライニングレバーは撤去されていますが、窓側席だけ、レバーの下端部がわずかに切り残されており、リクライニング機能も生きていることが画像からもお判りいただけます。

このシリーズの座席、3列席が回転できなかったことでヒジョーに評判が悪かったのは有名な話です。しかし、以前からの主張通り、座るための座席機能そのものとしては、その形状や固さなど、非常にデキの良いものであるとの持論は今も崩していません。

恨むべきは、この座席を940mmのピッチで配置したこと。背ズリ下のリンク機構の仕舞いを行う関係から、カバー部分が上の方まで迫り出てしまったことにあるんですネ。そういう意味では、悲劇の座席といっても差し支えはなかったでしょう。

歴史に「もしも」は禁物ですが、R55やR51改タイプでよく見られる背面テーブルがもう少し早く開発されていたら、またはリンク機構がシュリンクできていたら、ソデ体デザイン的にもかなり美麗な一作になっていただろうに、と思わされます。そして、この座席の命運そのものも変わっていたかもしれません。

D23の方は、回転機構も生きてますので、このように向き合わせにすることもできます。小さい子供だけでは少々危険も考えられるので、付き添いの大人が操作すると良いでしょう。D32については、窓側に少々寄り付けて配置されてしまっており、窓側席は座ると狭々しています。

同館は、移転改築工事の対象となっており、次期科学館にこの展示が残る可能性は今のところ不明だそうです。

座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通2D23940mm
普通3D32940mm

所在地交通座席特記事項
〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄2-17-1
TEL 052-201-4486
名古屋市営地下鉄伏見駅から徒歩3分D23
D32
開館時間09:30-17:00
入館料が必要です。
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