つくばエクスプレスTX1000/2000系 最終確認時期:2009年5月

首都圏最後の新規開業路線と言われている「元・常磐新線」。電脳都市から頭脳都市まで、最速の快速なら45分です。冷戦時代の諸外国のご多分なら、つくば研究学園都市は地図上に存在してはならないエリア、アクセス路線となるこの路線も隠れ路線扱いなんですよね(笑)。ああ、平和で良かった。

車両は2種類、直流区間のみのTX1000系と交直両用のTX2000系があります。写真は守谷始発のTX1000系、開業記念ヘッドマークがポイント。

こちらがTX2000系。快速に乗ると判るそのスピード感。守谷以北なんざもう快感のブッチギリ走り。ホームで待つ身も引き締まろうというモノです。

既に有名となりましたが、足立区内の六町駅北千住側で快速通過を体験してみるのも乙ですね。あの風圧と恐怖感は都心に現れた恐怖スポットと言えそうです。

ヘッドマーク無しのお顔にて。この顔、何かに通じるなぁ…と思っていたのですが、「ウルトラセブン」シリーズで登場した警備隊の所有車「ポインター」にイメージが被ります。多分にして勿論、そう思うのは私だけであると信じていますが。

それでは車内へ。ロングシート部分はTX1000/2000系ともほぼ共通の設計となっています。白い化粧板をベースにグレーの床、エメラルドなモケットとアクセントはハッキリしていますが、それ以上でもそれ以下でも無い平々凡々なデザインとも言えます。

通勤列車としてはこの評価は最上なのかも知れませんが、1980年代後半〜1990年代前半のデザインセンス以上のモノを感じないのは鳴り物入りの路線としてはちょっと退屈かも知れません。

ロングシート、長い部分は2-3-2で7人掛、途中に例によって例の如く掴まり棒が付いていますね。先般、鉄道総研の発表物にあった湾曲掴まり棒と風合いが似ていますが、角度や張出量からして全くの別物です。

優先席は鮮やかなブルーのモケットに優先4種のマークが染め抜かれています。

こちらは反対側の優先席。座席下に消火器がセットされています。驚くべきは最近の通勤形車両にしては珍しく妻窓が有り、ましてや開くようになっています。これは側窓を固定化したものの、一定以上の開口部面積がないと車両の構造基準を満たせない為と予測されます。

JR東日本の同コンセプトで投入した初期の209系などでは、それが故に蒲田駅停電事故などで換気効率が問題となり、側窓増設の改造工事を行うことになっています。首都圏屈指の高速路線、側窓が開かないことでデザイン的に・安全確保的にもリードかと思われましたが、今後どうなるのか興味は尽きません。

車端部は3人掛、シンプルですね。

ロングシート、まず目に付くのはソデ体カバー。JR209系電車以来のアレより小ぶりで明るさ感がアップしていますが、如何せん内側構造に工夫も進歩も見られないのは設計段階での痛さ全開です。内側の窪み量が少なすぎて意味がありません。肘を置き、ロングシートのキツキツ感を軽減させるなら、最低でも5cm程度の「のりしろ」が必要であると考えます。できれば武蔵野線205系のソデ体カバーくらい内寸が無ければ文字違い・意味違いの「ギャグ」です。

日立A-Trainシリーズによく見られる風合いの座席ですが、これはいけません。異様に垂直な背面、ほぼクッションレスな座面、人間工学上の寸法云々という次元を超越した固さと形状のヤバさ、足裏への圧迫感全開…コレは座席じゃありません、明らかにクズな設計です。東急5050系以来の悲惨なブツですな。

設計・製造サイドのレベルや程度ではなく本質的な良心を疑います。いくら何でも、手加減ってモノがあるでしょうに…。

さて、3・4号車はセミクロスシートになっています。そのうち3号車は弱冷房車、人が集まりがちなのに弱冷房車…配置のセンスがありませんね。

個人的なオススメは4号車。電動車であることに加え、つくば方面行きに乗って守谷を出るとデッドセクションに向かって狂気の鬼走り、そして無電区間でゴウン…と止まる空調、すかさず屋根上でゴツンと感じる交直切り替え装置の音…堪りません。

セミクロスシート全景その2、ちょっと肘掛が異なっているタイプです。

この車両に乗る場合、空調の直撃が苦手な人は車両中央のボックス席が良いでしょう。ラインデリアが途切れています。逆に空調の風が欲しい人は両端のボックス席の位置が良いでしょう。

さて、クロスシート部分。座って判るのは妙に広い感じのするボックス席。それもその筈、1580mm(フレーム間ピッチで1600mm)と12系客車並みのゆとりです。しかしこれが凄い。直角を通り越してうっかり鋭角ですよ、奥さん(笑)。

通路側の肘掛がキュートですが、肘掛の黒い部分は合成皮革ながら張りモノでカバーしています。FRPじゃないところはエライのですが、開業してそう間も経っていないのにもう破れている車両があります。と言うか、留め位置少なすぎ、巻き込み量少なすぎ、革柔らかすぎ。

この辺に認識の甘さ、と言うか座席設計と製造はある程度経験値がモノを言う世界であることをひしと感じます。

さて、クロスシート部分、ロングシートに背ズリを増設しただけと思ったら大間違い。実は全く別設計です。座面角度もロングシートよりさらに扁平に向いていると言う凶悪設計。

座面はイイトコ1.5cm程度の詰物+底突き感満点の文字通り「煎餅」座布団、ボディホールディングに真っ向から挑戦するような身体追従性、しっかり腰掛ると腿裏と腰椎上部に感じる鬱血感(と言うかストレス)…近代希に見る酷さです。

クロスシート背面、アームレストを支えるためなら大仰なのですが、相鉄のクロスシートっぽい背面形状をしています。

この角度なら判りますが、ロングシートとクロスシートのランバー部分の形状と寸法が異なっています。これが実は視覚的にジャム感を与えている気がしますヨ。

クロスシートその2です。電脳都市と電脳研究エリアを結ぶ電波路線らしく、ビリビリの車内LANの継続試験サービスを行うとのことです。その対象編成のボックスシートはテーブルが設えられているので、アームレストがこんな感じになっています。

見た目重厚感が一気に58%アップ(主観比)となりますね。しかし、車内LAN装置は先頭車に設置という話もあり…そうなるとこのテーブル設置が3・4号車のクロスシート部分、それも通路側のみと言う理不尽にして訳解らん配置は泣けてきます。いわゆる「成り行きでこうなった」と言う奴?

テーブルを出してみるとこんな感じ。あちこちのIT系ニュースサイトでこのテーブルの上にノートPCを置く画像が撮られていましたが…。信じて実行したらかなりの確率で痛い目を見ることになると思いますヨ。

どうしても乗せるならB5サイズ以下のノートでも小ぶりなマシンを推奨します。ちなみに、今は開業早々であまり揺れませんが、今後はどうなるか判ったモンじゃございません。

形状やテーブル素材のチョイス、サイズ…どれを見てもノートマシンよりビールとつまみを置くための台としか思えないのは常磐方面の呪縛?何せ、テーブル手元側にドリンク用の窪みがある時点で(笑)。そりゃぁ、まぁ他への転用もあり得る別パーツなわけでして…。

ちなみに、上の写真で「?」な違和感を感じた方。これを見ると納得。組み付け段階の作業の荒さ故、アームレスト・テーブルは1.5cm程度の高低差があり、おまけに綺麗な水平が出ているテーブルに巡り会える確率たるや…。

ノートPC、置いてしまえば通路側への撓みならごまかせますが、手元側への撓みだと命取り。さぁ、チャレンジャーを求む(笑)。

ちなみに、こんな精度の組み付けでよく納品検査ハネられなかったと感動しています。普通ならやり直しです。余程甘いのか、余程急いでいたのか…。

真横から。座面の傾斜はロング部分より扁平とは先述の通り。オマケにランバー部分の張り出しがあって無きが如しの形状はイケてません。しっかり腰を奥まで入れても何だか前のめりに座っている感じになります。

概して、近郊形車両のボックス席は膝がぶつかると言うのがウィークポイントなのですが、広いシートピッチでギリギリに座らせてもあまり有難味が…座り心地にピッチを還元しろよ、と。

なお、このフタをパカッと開けるとこんな感じですが、ヒンジをこの角度で留めているテープはかなり弱いです。もうそろそろ千切れてるのがあってもおかしくない。

もうホントに急ごしらえで造ったな、と言う印象しかないのが残念であります。

ドアはガラス面を平滑にした押し込み形。今やどこにでもあると言えばあるタイプです。框上の情報提供装置はなかなか芸達者で、つくばエクスプレス関係の宣伝時はデザインロゴが流れてきます。

車端部の貫通扉。自動で閉まる半自動機構が仕込まれています。

運転台後ろ…何だか垢抜けないなぁ。なんでこんな創意の無いデザインに?

撮影時はまだ8月だったので(笑)。

お約束のTXロゴ、誰が言い出したかカタカナの「イヌ」に似てると言う指摘は確かに笑えません。

さて、TX2000系はその後数編成の増備を行っています。基本的な構成は初期投入車と変わりませんが、細部で若干の差違が見られます。

以前、散々言ったクロスシートですが、プレスリリースベースでは座ブトン厚やクッション構造の改善などが図られたとの話もあります。しかし、元々がアレ故か、その生まれの悪さを返上するようなモノにはなっていません。鬱血感やホールディングの悪さは何ら改善されていないようなものです。

心置きなく悪口雑言できるというのは、座席趣味者としてはあまり嬉しいものではありません。

既存車両との差違ですが、床面模様の変更と引き下ろしカーテンのフリーストップ化が図られています。下の窓枠までキッチリ下がるようになりましたね。

テーブルなども忘れず設置されています。しかし、段差などの組み付けの荒さは如何ともしがたい…。些細な改善と言えば、テーブル収納面アームレストカバーを固定するヒンジ構造に若干の改善が見られる程度です。

先般、天皇陛下が筑波へ行幸された際、還幸啓の途にてこの車両(この座席ボックス部分)をご利用されておられましたが、諸事ご理解深い陛下と存じ上げつつも、TV画面からお気の毒に感じざるを得ませんでした。

ロングシート部分は、座面の構造変更以外に特に顕著な違いは見られません。ドア部周囲やドアステップ前に黄色テープによる警告サインが追加された程度ですね。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通4(ボックス)不詳1600mm