8000系電車(リニューアル後)(Side-E) 最終確認時期:2006年11月

本来の紹介面、いわばA面でいつもの悪口雑言が見られないことに不思議に思って戴いた方、このファイルへのリンクを見つけて戴いたコアな皆様にのみお届けする「Side-E」。いわば暗黒のB面。他の車系についてもひょっとしたら存在しているのかも知れない…。

今回、JR四国8000系電車のグリーン席に数回乗ることができたのですが、結論から先に言えば「グリーンは死んだ」と言うべきでしょう。座席だけで見たら、旧来の自由席を使った方がよほど快適な一時です。座席自体に目を向けてみると、どうにもアラというか採寸やら着座姿勢を考慮した設計段階に問題があるようにしか思えません。

カラーリングはさておくとして、普通席と同じパーツを用い、工夫も芸もなく使い回しているその根性がすでに終わっています。単に座面を横に広げればグリーン席、と言うコスト以前の良心を疑うセンス。ちなみに、テーブル幅325mm、フットレスト幅250mm、アームレスト長450mmはどれを取っても普通席のフレームまるまる横流しです。結果的に横方向にだけ大きく見えてしまい、寸詰まったシルエットも宜なるかな。100歩譲って、予算の壁などを鑑みたJR四国側からの指定とされればメーカーは致し方なしではありますが、それは楽屋側の話。舞台に出たら何を言われても仕方ないところでしょう。

ちなみに、リニューアル前のグリーン席とほぼ同仕様の座席が残る2000系気動車のグリーン席においては、サイドのアームレストが520mm、センターアームレストに至っては640mm。数値から実感する重厚感を改めて思い起こすのも悪くありません。

まず背ズリ。画像の通りで、ライン取りは一見してなかなか良いラインが出ているように見えます…ヘッドレストはボリュームを盛り込み、腰回りもしっかり出ているよう。しかし、外縁のシルエットに騙されてはいけません。実際に着座する背面中央部分を見ての通り、腰回りの張り出しはそんなに見られません。いや、平板に近いです。このため、着座しても体重分散が思うようにならず、尾てい骨部分に重さがドスンと落ちてくる格好になります。それでいて、周囲の張り出しがこれまた身体サポートをしてくれない「お飾り」。この辺は失策と言って差し支えないリニューアルとすべきJR東日本651系グリーン席(R8/9/38)ですら妥協していない(新規増備設置の1番列でも)部分であり、鉄道会社側からの発注レベルと言うより、座席メーカーの設計力の責に負うところ大の失点と思慮します。

次に座面。そもそも論で、振子車両と言えど身体をしっかりホールドし、揺れに振り回されないような形状にならなければイケナイのですが、角度も取れていない上に、ホールド性が全くありません。酷い言い方をすれば、ウレタンのカタマリをテキトーに削っただけ、終わり、みたいなものです。この辺、2000系気動車に残る日本発条製の座席の方が遙かに上を行っています。「行き:電車しおかぜ・帰り:気動車しおかぜ」といった乗り比べをしてみれば一目瞭然。座った瞬間、身体全体をガッチリサポートするような食いつきの良さを発揮する2000系気動車グリーン席に比べ、8000系電車のリニューアル席の板の上に乗るが如き取って付けたテキトーさが際立つというモノです。雨の土讃線を最高速度で駆け抜ける2000系気動車が持つような、躍動感とソウルフルに彩られた走りに耐える座席ではないと言うところでしょうか。

普通席であればスペースの関係から許されたかも知れない座席付帯設備の取り回しのアラがそのまま残ってしまっているのも×。テーブルを手前に出してしまうと、フットレストの引き出し空間にほぼ間違いなくクツが干渉します。これ、ヘタをすればテーブルがひっくり返る原因。テーブルが充分広ければこんな心配も要りませんし、新幹線100系普通席などでは当たり前に見られた、フットレストアーム脇にクツを引っかけて引き下ろすペダルあるいは類する装備が全くありません。なので、「よっこいせ」とばかりに足を無遠慮に上げてフットレスト上端に引っかけて引き下ろす情けなさ。利用者の目線で設計されていないことがよく判ります。

そのフットレストも極めて下品な造りになっており、跳ね上げ時にいわゆる「ガシャン」という音を立てるイマドキに珍しく稚拙な仕上がりです。ダメ押しでフットレストは例によって例の如く高さを選べないタイプ。もう、着座姿勢大崩壊の勢いです。客がハードウェア側に合わせろ、と言うどこの業界の話ですかそれは?と思わざるを得ない状況に呆れてモノが色々言えるというべきであります。

泣けてくるのはアームレストと座席背面の間が両側とも妙にスカスカなのです。この質の悪いプラモデル然とした見栄えは正直如何なモノかと思います。そのアームレストも1人掛席においては、松山向きで窓側のアームレスト先端内側、リクライニングボタン穴をシールで塞いであります。普通車や少量生産の地域ジョイトレにおいて、とりあえずあり合わせを…といったものなら理解しますが、グリーン席でこのお手抜きは致命的にして貧乏くささ全開と言わざるを得ません。

実車の画像をWeb等で見るにつけ、実車に乗るまではあえて何も言うまい…と思っていたのですが、残念なことに見た目を超えるものにあらず、最も残念な評価に行き着くこととなってしまいました。

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