381系電車(スーパーやくも) 最終確認時期:2007年11月

陰陽連絡特急「やくも」。

新幹線接続の役目に加え、高速バスと殴り合う運命が不可避だった関係もあり、停車駅厳選による速達便設定や新幹線接続の早朝便設定など、ダイヤ面では試行錯誤ですが、アコモデーションについても1990年代以降、急速な改良やイメチェンが相次ぎました。

パープルベースの「スーパーやくも」は、後述のアコモデーション改良も兼ねた停車駅厳選形の速達列車として出てきたのですが、暫く経つとグリーンをベースとした在来車両のアコモデーション改良の進行により、事実上の車両混在が進み、なんだかウヤムヤの間に別稿の「ゆったりやくも」に一本化されてしまいました。

グリーン席の入口です。撮影した出雲市駅は近代的な高架駅となっており、ホームとドアの段差は小さめになってますね。

「ゆったり」化される前の「やくも」系統普通席は、シート表地のカラーリング変遷をさておくと、大別して2段階のテコ入れがなされました。第1段階が既存席改良、第2段階がシートピッチ拡大となります。

画像が第1段階のもの、1987年から施工されていたR52BNのバケット化座席(R52BN改)です。ピッチ910mmそのままに、背ズリも座面も派手な段付きになり、背面テーブルが取り付けられたタイプです。指定席をメインに施工され、自由席は昔ながらの青モケットまんまのR52BNが設置されていました。

当時は、まだ私の中で座席の撮り方がイマイチ安定してなかったので、今見るに、我ながら「酷ぇ」と思わざるを得ませんね(苦笑)。

その後、「ゆったり」化改造されるまでにシートピッチの拡大が図られ、併せて汚れが目立ちやすかった表地のリフレッシュが行われた車内です。

座席以外は登場当時の面影を…と言いたいのですが、デッキ仕切扉や荷物棚は、先の座席改良に合わせて更新が行われていました。

ピッチが1000mmに拡大されたR52BN改です。ピッチ拡大前のそれと比べたら、シート表地のカラーが変わり、モケットの張り分けもなくなり、統一トーンになったことが判ります。

しかし、リクライニング量や背面テーブルはそのままなので、特にテーブル面のアンバランスさが目立ってしまいました。R52BNは背ズリがやや抑え目になっており、せっかくの段付き加工も、背中とピッタリフィットかと問われたら、イマイチだったんですね。

また、特徴的なものとして、ヘッドレストだけ妙に浮いてるように見えるところ、やはり可動部位なので、クルッと回し背ズリの足しにできるようになっていました。しかし、これが実に固めの設定で、マトモに使ってるのを見る方がレアという…そもそも機能を知られていなかった説も濃厚です。

さらに、シートピッチ拡大の余波がこんな区画を作っちゃってます。空調ダクトが車両壁面を通る場所があり、座席回転上の支障箇所になることから、通路側席だけの1人席区画が各車両の所々にあります。

その評価はどちらかというとネガティブな印象が多いようですが、「ゆったり」にも引き継がれ、最近はキャリーケースなどの大荷物が増えたため、窓側に荷物が置けることから、ここを選ぶ人も多くなったようです。

全展開時のそれ。

さて、第2段階の波はシートピッチ拡大です。遠目には、座席自体は表地のカラーリング変更に留まっているように見える全景です。

シート表地はこれが2代目でして、初代はもうちょっと鮮やかなグリーンをベースに、縦にカラーラインがアクセントで入っているものでした。画像は一応持っているのですが、シャッター速度のヘマでお見せできない仕上がり故、ご勘弁を(殴)。

施工時期の違いか、施工工場が違うのか、荷棚やデッキ仕切扉の形状が違うバージョンもありました。

北陸特急や、魔境・上沼垂ほどではありませんが、やはり細かい部分の差異によるバラエティは豊かだったですよね…ええ。

紀勢本線「スーパーくろしお」で施工されたシートピッチ拡大に範を取り、自由席も含めて拡大、背面テーブルも北陸特急のR51改で施工されたタイプで後付け施工されました。

ピッチ拡大により、リクライニング角度も拡大設定され、座るだけならこちらの方が空間の有り難みを感じる設えであると言えるでしょう。ただね、R51・52系は座面に生まれの悪さがどうしてもありまして…ぼにゅん、としたオノマトペ的に妙な沈み込みというか底付き感は引きずってました…ええ。

ピッチ拡大のあおり、1人掛席はこちらにも。座席遷移的には、段付きバケット改造→ピッチ拡大改造→段付きバケット席のピッチ拡大、という流れでした。

ピッチ拡大車に限らず、座席台座については、グリルが内側に下がっている形状をしており、足元環境はそれなりに良かったのではないかと思います。

もっとも、窓側席は「ゆったり」化されるまでは配管カバーの関係でヒジョーに狭く、ここだけに限れば、窓側に座るか通路側に座るか、かなりのジレンマだったのではないでしょうか。

上の画像と似た物ですが、こちらは喫煙席のもの。背面カバー部分に灰皿が設置されているのが判ります。

1人掛席では、灰皿ってどうしてたのかな、ということで見てみると、前後の席は壁面に灰皿が設置されていました。

ただし、ダクトに当たる部分はそのダクトカバーに灰皿が設置されていたという、なんともギリギリ感漂う施工です。

洗面台を見れば、あ、振子車両にあったというゲ…(以下自主規制)。

反対側には、飲料水タンクと紙コップ、さらに手拭き用のペーパータオルという、JR黎明期の改造車にありがちな新旧施設が同居した光景。

グリーン席については、R30からJR西日本オリジナルのグリーン席への改座が行われていました。一見、観光バスにあったようなフレームですが、JR西日本管内の改座席では一時期主流となっていたタイプで、夜行向けの583系・北近畿系統の183系などにも改座の際に設置されていたのと同タイプです。

岡山視点で見ると、当時の瀬戸大橋線快速「マリンライナー」グリーン席と相通じるデザインとなり、かたや快速グリーン、こちら特急グリーンなのに、シートピッチで向こうに負けてる(マリンライナーは1300mm)…というちょっとした逆転現象もありました。

それでも、細かく言えば、ソデ体フレームやサイドアームレスト形状は別物でしたし、センターアームレストのガッシリ感は別物、背ズリの幅も別物と、似て非なる座席であると…判ってくれたのかな…当時は。

中間車にグリーン車が設定されていた頃のもので、座席表地が取り替えられたバージョンの全景です。

色の使い方が、西日本っぽい縦ライン基調のものになっています。

座席自体は、同時と変わっていませんが、色調の変化により、イメージがだいぶ変わりましたね。

現在の「ゆったり」改造車のグリーン席もそうですし、西日本の車両では九州新幹線直通のN700系グリーン席も然り、フットレストの高さを固定するケがあります(東海道直通の新幹線車両や、かつての「くろしお」系統381系が例外的)。高さがピタリする人は良いのですが、合わない人にはちょっとつらいかも。

そして、パノラマグリーン席です。先の改座席と、一見似た全景ですが、荷棚や窓枠周辺のカバー形状が異なっています。

パノラマグリーン席は、座席部分だけ床面がちょびっとハイデッキになっており、窓側足元の配管カバーがなくてスッキリしています。今の「ゆったり」改造の系譜はここにあったんですね。

座席自体は、先のものと変わりませんが、ソデ体のフレーム塗装が先のものは濃いめのブラウンなのに引き替え、こちらはパープル基調となってます。センターアームレストの固定台座部分まで、色調が統一されているのですから、意図的に差がつけられていると解釈すべきでしょう。

この座席の隠し機能として、画像のようにヘッドレスト部分だけ角度が変えられるようになっているんですね。普通席のヘッドレスト共々、振子車両で少しでも身体追従性を良くしようと試みた結果の仕様なのでしょうが、いかんせん…知られてなさ過ぎの悲しさが先に立ってしまいます。

「やくも」系統のグリーン席が3列改座された後、一部の座席は、12系イベント列車「きのくにシーサイド」の客席に転用されました。

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座席データ座席クラス掛人数座席形式シートピッチ
普通1R52BN改1000mm
普通2R52BN改1000mm
グリーン2不明1160mm